特別講義 テーブルマークの挑戦 「本場に負けない冷凍さぬきうどん」

1限

本場に負けない冷凍さぬきうどんを作る

みなさん、こんにちは。
本日、特別講師としてお招きいただいたテーブルマーク株式会社 山田顕です。みなさんよろしくお願いします。

こんにちはー。
よろしくお願いします!

テーブルマークとさぬきうどん

山田さんはどんなお仕事をされているんですか?

現在は冷凍麺の開発をしています。入社時は冷凍麺の製造部門を経験、その後、冷凍うどんを中心に、そば、ラーメンなどさまざまな麺製品の開発を担当しています。入社以来約20年ずっと冷凍麺に携わっています。

麺のこと、なんでも知ってそう!山田さんは、どの麺が一番好きなんですか?

それはもちろんうどんですよ!ウチの「冷凍うどん」は特に大好きです。

うわぁ、やっぱり「冷凍うどん」好きなんですね。
ところでテーブルマークが「うどん」に注目した理由ってなんですか?

テーブルマークの前身、加ト吉は香川県で創業しました。香川県といえば、さぬきうどん。今ほど全国に知られていなかったさぬきうどんのおいしさを「全国の人に知ってもらいたい」「全国どこででも、このおいしいうどんを食べてもらいたい」という強い想いがありました。当時、冷凍コロッケや冷凍えびフライなどで培った冷凍食品に関する技術やノウハウを持っていた私たちは、冷凍さぬきうどんの開発をスタートさせました。

いよいよスタート!冷凍さぬきうどん開発プロジェクト

冷凍うどんの開発は、うどんの本場からスタートしたんですね!

その通り!香川県にはもともと製麺工場がたくさんあって、当時は多くの会社がこぞって「冷凍さぬきうどん」の開発にチャレンジしたそうです。

じゃあライバルがたくさんいて大変だったんじゃないですか?

それはもう、我先に!って感じだったそうです。私たちも他社に先を越されないようにいろいろな調査を始めました。最初は、評判のうどんを毎日片っ端から食べ歩いたり、職人さんにうどんを打ってもらい、冷凍の試験をするなどしたと聞いています。

さぬきうどんの命、コシに着目

それで分かったことは?

おいしいさぬきうどんの命は、麺の「コシ」だということです。そしてあらためてうどん職人の動きを観察してみると、作業のひとつひとつがうどんの「コシ」を作るためのものだとわかったんです。

「コシ」かぁ。やっぱり「腰」のくびれは大事よねえ。

その「腰」とはちょっと違うんじゃない(汗)? 

そうなの!?

コシ、大事なんです(笑)。そのためにはまず、うどんの原材料となる小麦粉、水、塩、そして加工でん粉の配合や温度管理がとても重要になります。

そんなに細かいんですか?

はい。気温の変化などによっても生地の仕上がりが変わってくるため、開発当時は原材料の配合に毎日気を配ったそうです。

職人に学べ!うどん作りの技

うどんってデリケートな食品なんですねぇ。

私たちは本当においしいうどんに仕上げるために高品質な原材料を厳選して作っていましたが、それに満足することはありませんでした。本場のうどん屋さんに負けないさぬきうどん作りのために、新たに大手製粉メーカーと共同で専用小麦粉と専用の機械を開発したりと、原材料にはとことんこだわりましたね。

こだわりの材料がそろえば、あとは作るだけですねー。

確かにこれでうどんは作れます。しかし、おいしいうどんを作るためにはいわゆる職人技、つまり感覚で成り立っている部分が大きく、材料の配合、生地作り、製麺、ゆであげなど、職人の持つ技術をいかに機械で再現するかが事業としての最大の課題だったのです。

職人技を機械で・・・。それでどんなことをしたんですか?

季節、天候、気温など、職人が経験と感覚で調整しているものを、ひとつひとつデータに記録し、おいしいうどんが作れる条件を探ったのです。同じ条件で作っているのに同じ品質にならない、なんてこともよくありました。

最初の難関、生地作り

職人の感覚をデータ化するって難しそう。

はい。集めたデータを元に機械メーカーや製粉メーカーと協力し、それぞれの工程に職人の技術を活かした製造ラインを開発したんです。

例えばどんな工程ですか?

例えば生地作りの工程です。本来、さぬきうどんは職人が生地をこねて、足ふみを することで生地の空気を抜くんです。この工程は、さぬきうどんの命ともいえる麺のコシに大きな影響を与えます。

生地の中の空気の影響って大きいんですね~。

はい。それに麺に空気が含まれていると、均一な生地ができにくいんです。生地中の空気によってコシも生まれづらくなります。ゆでる時にも麺がお湯に浮いてきて、ゆでムラができてしまうのです。

空気、なかなか厄介なやっちゃなっ。

そこで導入したのが「真空ミキサー」です。真空ミキサーはその名の通り、原材料を“真空状態”で生地中の空気を抜きながらミキシングするものです。これは製粉機械メーカーと開発したんですよ。
こうして「コシ」のある高品質な生地を短時間で安定的に生産することに成功したんです。

機械の技が活きたわけですね!

またもやピンチ。プロジェクト最大の難関!?

ええ。ひとつの課題を機械によってクリアすることはできました。しかし、「冷凍さぬきうどん」の完成にはさらなる難関があったのです。

それってなに?

さぬきうどんをおいしく作るまではうまくいきました。
でも冷凍したさぬきうどんを解凍したときに、このおいしさを再現することが難しかった・・・。

それまでの冷凍技術ではできなかったんですか?

私たちは以前から冷凍えびフライや冷凍コロッケを作っていたので、食品を冷凍する技術を持っていました。でも、それまでの冷凍技術では、さぬきうどんの「ゆでたてのおいしさ」をキープすることができなかったのです。

「ゆでたてのおいしさ」をキープってどういうことですか。

うどんは、打ちたて、ゆでたてが最もおいしいといわれています。ゆでたてのうどんは、外側の水分量が80%前後なのに対して、内側は50%前後と水分量に差があります。この「外と中の水分量の差」がコシを生み出しており、さぬきうどんのおいしさそのものだということがわかったのです。

今度は水分量かぁ。

重要なのは、この「ベストな水分量の差」をお客様が食べる瞬間までいかにキープするか。そして誰もが簡単に再現できるようにすること。
ゆで上げ状態のまま冷凍できれば、解凍したときにもゆで上げ状態が再現できておいしいはずです。ところが、当時の冷凍室では冷風のあたり方にバラつきがあって時間もかかるため、凍る前に麺の水分量が均一化し「コシ」のない状態で凍結してしまったのです。

おいしさの鍵をにぎるのは…!?

それで解決方法はあったんですか?

さまざまな実験の結果、麺の温度を一気に下げ、極めて短時間で凍結できれば、「80:50のベスト水分量」を保てることが分かりました。
つまり「うどんの一番おいしい状態」を「急速凍結」することが、さぬきうどんの本物のおいしさを長期保存する方法だったのです。

家庭の冷凍庫ではとてもできないですね。

はい。冷凍技術はこの40~50年で目覚ましい進歩を遂げているので、常に最新の凍結機を導入しています。

「急速凍結」かあ!すごいレベルまで到達したんですね。

これで、電子レンジや鍋のお湯で凍った麺を解凍するだけで、ゆで上げの状態に戻る。家庭で本物のおいしさが再現できるのは、まさにこの「急速凍結」のたまものなのです。

冷凍さぬきうどん、いよいよ発売!しかし…

こんなすごい商品、登場した時はみんな飛びついたんじゃ?

いえいえ。1974年に発売した「冷凍さぬきうどん」ですが、思うように売れない日々が10年程続きましたね。

えっ、どうして!?

家庭用も、業務用も、本物のおいしさを追及したことでどうしても製造経費などのコストがかかり、価格が上がってしまったのも要因のひとつですね。

市場の反応は厳しかったんですね…。

しかし、そこであきらめることはありませんでした。私たちには「食べてもらえば必ずそのおいしさと価値を分かっていただける」という強い信念があったからです。
製造部門はさらにおいしいうどんを目指して改良を重ねました。営業部門は全国のスーパーマーケットを回り店頭で試食してもらったり、サンプルを配ったりするなどのプロモーション活動をしたり、業務用向けには在庫してもらえるように、冷凍ストッカーを持ち込んだり精力的に取り組みました。

本場のさぬきうどんが家で食べられる日がついに!

で、で、その成果は?

努力の甲斐あって、「冷凍さぬきうどん」のおいしさと便利さの評判が次第に広まりました。またライフスタイルの変化や冷凍冷蔵庫の大型化、またスーパーマーケットの冷凍食品売場の変革などもあり、次第に需要も拡大していきました。

確かに冷凍うどんは、今やスーパーでも家庭でも欠かせないですもんね。

それまで保存食というイメージの強かった冷凍食品ですが、「冷凍さぬきうどん」の本格的なおいしさがお客様に高く評価され、冷凍食品の主食分野の中でも大きなシェアを占めるようになり、1992年には年間製造数量が1億食に達しました。

うわー、高いレベルの商品作りに挑み続けた成果ですね。

ここから加速度的に増えて2000年には3億食。そして2012年には5億食の大台に乗り、2020年には6億食を突破。お客様のご支持のおかげでトップシェアを堅持しています。ありがたいことです。

6億食!?日本の国民全員が1年に6玉近く食べていることになるんですね。
すごいなあ。

価格面の変化もあったのですか?

初期投資を考えるとしばらくは利益が出なかったのですが(笑)、お客様に手軽にお買い求めいただけるよう努力を重ねました。製造ラインの自動化を完成させ、毎年単価が下がるよう尽力し、今はだいぶお買い求めやすくなりました。 これも原材料メーカーや機械メーカーなど力を合わせてくれた仲間との絆があって実現できたことです。

そして、これからの冷凍うどんは…

「冷凍さぬきうどん」は、ついに完成したというわけですね!

いえいえ。「冷凍うどん」はこれからもさらに進化を続けますよ!

どんな??

例えば、小麦粉などのうどんの原材料の生産を自ら手がけるとか、お客様に今食べたいと思っていただけるようなトレンドを意識したメニュー開発をするとか、するべきことはたくさんあります。

そりゃ、楽しみだなー!

麺の食感にも多様性が必要かもしれません。人口の1/3が高齢者となる時代を迎え、「やわらかさ」が求められることも想定されますからね。

「冷凍うどん」の世界、ますます広がっていくような・・・。

実は、ここしばらく冷凍麺の需要に大きな変化はありません。
そこで、乾麺、チルド麺などさまざま麺がある中で、「冷凍麺」のおいしさと便利さをもっともっとお客様に知ってもらう必要があると思っています。

私も「冷凍うどん」のすばらしさ、友達や家族に伝えたい!!

ありがとうございます。お客様が本当に求めているもの、そして安心してお選びいただける商品をお届けするためにこれからも開発努力を続けていきます!

テーブルマークの冷凍食品が、もっともっと全国のご家庭のテーブルを飾るといいですね。

そうですね。ライバル会社と切磋琢磨し、業界全体で盛り上げていきたいと思います。

なんだか自分の目で製造工程を見てみたいなー、なんて。

私もー!

それはいいアイデアですね。工場見学ができるように工場に連絡しておきましょう。
課外授業でさらに「冷凍さぬきうどん」について学んできてください。

ゼミ生)ありがとうございます!!

2限

潜入!冷凍さぬきうどん工場へ

ようこそ、テーブルマーク冷凍うどん工場へ!
みなさんをご案内するテーブルマーク株式会社
真田達也です。

こんにちはー!!よろしくお願いします!

うわー、見て見て、なんかいろいろ機械が動いてるよ!

冷凍さぬきうどん工場へGO!

真田さんは、いつもどんなお仕事をされているんですか?

私は冷凍うどんはもちろん、ラーメン、そばなども含めた麺製品全般の開発を行っています。

うどん、好きですか?

仕事柄、毎日のようにウチのうどんを食べてますが、それがまったく飽きないんです。好きなんでしょうね(笑)

やっぱり!

(笑)テーブルマークのみなさんのうどん愛を感じます。

この工場では、最高水準の品質管理体制のもと、おいしくて安心してお召し上がりいただける「冷凍うどん」を生産しています。

人があまりいないんですね。

はい。うどん職人が手作業で行う工程を巧みに機械で再現しています。
今日はしっかり見学していってくださいね。

わくわくしてきました!

<原料>

まずは、原料についてお話しておきましょう。冷凍うどんの原料は、小麦粉、水、塩、加工でん粉ですが、特に小麦粉は、国産かオーストラリア産で厳しい基準をクリアしたものを使い、小麦粉本来のおいしさを引き出しています。

<ミキシング>

この回転している機械は…一体…?

小麦粉、塩、水などをミキシングするのに欠かせない「真空ミキサー」です。

どんな特徴があるんですか?

このミキサーは、原材料を“真空状態”で混ぜ合わせることができます。
真空にすると生地の中の空気が抜けます。そうすると小麦粉と水の混ざりが良くなって、短時間でコシのある生地が作れるのです。

「コシ」キターッ!

<圧延>

次の麺棒みたいな機械はなんですか?

練り上がった生地を、内側に練り込むように折りたたむ工程です。

なんか、人の手に見える…!?

いい指摘ですね。この麺棒のような器具で生地にゆっくり圧力をかけ、何度も何度も延ばしていきます。職人の手打ち製法でいえば、手で延ばし、足ふみをし、また延ばし、徐々に徐々に薄くしていく工程です。

なぜこんなにゆっくり時間をかけるんですか?

一気に延ばしてしまうと、小麦粉の中の粘りのもとになる成分、“グルテン”が壊れてしまうからです。その結果、コシのないボソボソした食感のうどんになってしまいます。うどんに強いコシを与えるために大切なポイントです。

また「コシ」キターッ!

<熟成>

次に「熟成」と呼ばれる、延ばした生地を寝かせる作業に入ります。

どのくらい寝かせるんですか?

寝かせることで生地の弾力がアップします。実際は気温や水分量で、時間や温度を調整します。あれを見てください。

どこ、どこ!?

この生地、長~い1枚なんです。

ホントだー!

温度管理された部屋の中で、少しずつ動かしながら熟成させていきます。

<圧延>

ここではどんな作業が行われているんですか?

熟成が終わった生地を、うどんサイズの厚さになるまで延ばします。

ここでもゆっくり時間をかけるんですね。

やはり、グルテンの組織が壊れないように少しずつ少しずつです。
大切に大切に延ばすことで、だんだん生地の表面にしっとりしたつやと弾力が出てきます。

うーん、確かにキレイだわぁ…。

<切り落とし>

ここは、ずいぶん賑やかなところですね。

いよいよ、熟成の終わった生地を麺状にカットしています。

2つの機械でカットされているみたいですけど…。

はい。「包丁切り」と「スリッター」の2種類です。

どう違うのかしら?

切り方が違うと、うどんの角の形が違います。つまり、食感に違いが出るわけです。「包丁切り」は、職人と同じように包丁で1本1本切っていきます。包丁で切ると麺の断面が少し凹み、角が立ってつゆののりが良くなり、コシがあってのど越しの良いうどんになります。

もうひとつは?

「スリッター」による切り出しは、麺の幅に合わせた「くし」のような刃に生地を通す切り方です。刃が固定されているので、安定した品質のうどんを大量に作るのに適しているんです。

<ゆであげ>

うわあ、ここは熱気を感じますねー。

いよいよ「ゆであげ」の工程です。たっぷりのお湯の大釜でうどんを踊らせるようにゆでます。ほら見てください!

ホントだ、踊ってる!踊ってる!すごい量のお湯ですね。

<冷却>

で、今度ここは水風呂って感じですか?

ゆであがったうどんを流水でやさしく洗ってぬめりを取り、すぐに「冷却」します。

どんな効果があるんですか?

これもコシのためです。冷水で一気に締めると、コシの強いおいしいうどんになります。職人の作業と同じですね。さて、これでおいしいうどんができました。

<トレー投入>

おやおや、ここでうどんが分けられてるぞ。

1食分ずつ計量してトレーに分け入れます。ムラなく冷凍されるように形や厚みを整えます。

<冷凍>

小分けにされたうどんが向かう先は…?

さあここで、ゆであげた直後の「うどんの一番おいしい状態」を保つために「急速凍結」します。

ゆであげ直後のうどんは、外側と中心部で水分量に差があるんですが、これこそさぬきうどんが一番おいしい状態なんです。冷凍に時間がかかると凍る前に麺の水分量が均一化し「コシ」のない状態で凍結してしまうのです。

そこで「急速凍結」か!

はい。「ベストな水分量の差」をお客様が食べる瞬間までキープするには、短時間で麺の温度を一気に下げる必要があるんです。

すごい技術ですね~。

<検査>

この後はどうなるんですか?

うどんを個包装する前に「金属探知機」に通します。さらに「異物検出機」で、金属だけでなく硬骨・石・ガラスなどの硬質異物の混入をチェックし、「X線検査機」に通して製品に問題がないことを確認します。

この徹底ぶりがお客様の信頼へとつながっていくんですね。

<包装~出荷>

そして家庭で使いやすいように個包装し、賞味期限を印字します。

うわー、これでやっと出荷だぁ。

いいえ、まだです。パッケージ包装後にもう一度、金属検査とX線検査を行い、最後まで厳しい検査に合格した製品だけが全国へと出荷されます。

おそれいりました…!

<最後に>

どうでしたか、みなさん。このようにたくさんの工程を経て、おいしくて安心してお召し上がりいただける「冷凍さぬきうどん」をお客様にお届けしているんです。

ありがとうございました!!

冷凍さぬきうどんの開発秘話、そして手打ち製法の機械化を目指した製造工手。この2つを通して、「本物のおいしさ」を追及したテーブルマークの想いがひしひしと伝わってきました。

それは本当にうれしいですね。さぬきうどん発祥の地で誕生した「冷凍さぬきうどん」は、「本物のさぬきうどんのおいしさをもっと知ってもらいたい」「もっと手軽に食べてもらいたい」という強い情熱と技術の粋から生まれました。これからもお客様の期待に応えられるよう、現状に満足せずさらなる進化を求めて、日々研究開発を進めていきます!!

あー、今日は絶対にうどんを食べるんだーっ!

あ、できれば…、テーブルマークの「冷凍さぬきうどん」を!

もちろん!!(笑)

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